第12日 ペドゥルーズ〜サンティアゴデコンポステーラ 18km
前にも書きましたが、私は朝早くから歩く派ではなかったのですが、この日は5時半頃に起き出して6時半頃には歩き始めました。同じ階にいたアメリカ人たちはもう出発していました。
森の中を歩くのと、天気が良くないのと、まだ明るくなりきっていないので、最終日にしてヘッドランプを初めて使いました。持ってきてよかった。
私の大好きな残存距離の表示が突然なくなってしまいます。心もとない気持ちではありましたがまあとにかく歩きます。人にはあまり会いませんでした。
半分くらいのところで、「ブエンカミーノ 」と言ってきた男の子と話をしながら歩きました。とても英語が上手なギリシャ人で、SJPPから始めたと言っていました。私がオビエドから来た、と言ったら、本当に一人でオビエドから歩いたの?とびっくりされて、道はどんなだったのかとかとても興味を持ってくれたので、プリミティボがどんなに大変でどんなに綺麗な道だったのかこの12日間を思い返しながら話しました。
こんな教会や
こんな景色を抜けて歩いて、少し休憩したかったのでカフェのところでギリシャ人と別れました。
これは大聖堂まであと5kmというところにある丘で、「喜びの丘」と呼ばれています。何百キロも歩いてきた信者が最後に登るこの丘から初めて肉眼でその大聖堂を確認できることからそう呼ばれているそうです。しかし、モニュメントのセンス的にはどうなんだ、とずっと思ってきたのですが、きっとそんなことはさておき、大聖堂が見えたら感動でないちゃうんだろうな、と思って気もした。
が、実際
霧が邪魔して肉眼では見えないわけですよ。こんなもんです、現実。でも遠くにうっすら見えるんですけどね!
丘を降りたところであと4.7kmの表示。あと1時間ちょっとです。
この丘を降りるとサンティアゴの郊外に出ます。郊外から旧市街地まで心がはやって長く感じます。サンティアゴには着いたけど旧市街じゃない、というエリアとか永遠に感じました。
こんなに苦労して歩いてきたのに、大聖堂がヨーロッパの街に普通にあるような普通の大聖堂だったらどうしてくれよう、と突然不安になってきました。
ちらりと見え隠れする大聖堂。
フランス人の道とプリミティボは、大聖堂の裏手から歩いてきて小さなトンネルというか門をくぐって大聖堂の前の広場に回り込む感じになります。旧市街に入った途端、中世の面影を残す路地の入り組んだ街並みになります。観光客がいっぱい。
着いたら泣き叫んじゃう!と思ったけど、なんだか呆然としてへなへな座り込んでしまいました。隣に今朝私を抜いた男の子が座っていたので、握手して、おめでとうと言い合って、写真を撮り合いました。
大聖堂の前で昨日のウィーン男と会いました。僕はもうアルベルゲでシャワーもかけてきたよ!と、独りでこざっぱりした格好をしていて、お昼からのミサに出ると言っていましたが、私は証明書を取りに行く、というと「2時間街だから、ミサに出れないよ!」と言われましたが、まあ信者じゃないし私は別にいいわ、と言うと、じゃあ僕の分も並んでて!とのこと。
少し離れた巡礼証明書を発行してくれる場所に行くと、確かにすごい列です。しかも小雨。でも私の後ろにいた70代のご夫婦がオランダ人のご婦人とドイツ語で会話をしていたので、それに入れてもらって楽しいひと時を過ごしました。礼拝が終わってウィーン男が来た時は順番まであと4人くらいのところでした。運がいいやつめ。
そこにブルガリア人カップルが来て、証明書もらおうと思ったけど並んでるから諦めた。でも最後に会えてよかった、とハグをしてバスでムシアに発ってしまいました。
僕の分も並んでてくれたからランチを奢るよ!とウィーン男が言ってくれたので、二人でご飯を食べました。
空腹と、久々に美味しいものを食べるので興奮して写真がブレました。
明日から歩かなくていいんだよ!とお互いに何度も口にして何度も乾杯をしました。このウィーン男とは話が合って、どんな人生だったのかとか沢山話をしました。そしてお腹いっぱい食べました。
私はとにかくホテルにチェックインしたかったのと、服を買いたかったので一旦ウィーン男とは夜にまたメッセージ送るねー、と言って一旦ここで別れました。
泊まったのはこちらのホテル。
http://praza-quintana.santiagodecompostelahotels.net/ja/
大聖堂のすぐそばにあるブティックホテルで、24時間ブレックファストなどもあり大変素晴らしいホテルでした。
シャワーをかけてから、またすぐに外へ出てZARAで買い物をしました。トレッキングの服装をしないのは久々なので寂しい気もしましたが、普通の服を着れるのが嬉しくもあり。
そしてホテルで着替えてから20時からのミサに出ることにしました。12時からのミサに出たウィーン男がボタフメイロを見た、と言っていたのでちょっと羨ましかったのですが、特に期待もせずに行ったら立ち見も出るくらいの混雑でした。これはスペイン語のミサですが、時間をずらして各国語のミサがあるようです。
最後の方で、聖餅をいただくのですが(コミュニオン)、これは洗礼を受けた人のみがいただけるものなので私は参加しませんでした。以前、プロテスタントの礼拝で調子に乗って聖餅と赤ワインをいただきて夫にあとで叱られたことがあるので。
これが香炉なのですが、ミサの最後にこれがスルスルと降りて来て、周りがふいにざわつきます。全然期待してなかったボタフメイロです。以前見た写真では振り幅が狭くて大したことないような印象でしたが、実際に見てみると高い高い天井に付くんじゃないかというくらいまで上がります。隣にいたスペイン語圏の女性は「ヒッ!」とさけび声を何度もあげていました。
ミサが終わってホテルに帰ろうとしたらウィーン男からメッセージがきていて、ご飯一緒に食べよう!と言うので、ピンチョスバーで待ち合わせて、昼間あんなに食べたのにまたしても盛大に食べました。二人とも服を新調したので(ウィーン男は靴までご購入)もう巡礼者に見えないね!とお互いに褒め合って上機嫌でした。
私はスピリチュアルなものに縁が全然ない人間なのですが、このサンティアゴの街は、長い歴史を通じて蓄積された信仰心と、ここについた巡礼者たちの歓喜が街中に充満して不思議なオーラのようなものを醸し出す場所でした。ヨーロッパのどんな街からも感じたことのないとても特別な空気で。私もその喜びの中にいれられることができる幸せで結局深夜過ぎまで盛り上がっていました。